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♦2020/12/04

着物のある情景 ~師走・12月~

冬の朝

いつまでもお布団のなかにいたい…。ヌクヌクの空間は、冬の朝、私の心を引 き留めます。ああ、外は寒いだろうなあと思いながら、その心地よい温かさに包 まれていると、ふと子供のときのことが思い出されました。それは、冬になると 決まって毎日着物を着ていた母のことです。
母の着物姿といっても、もちろん普段着ですから、とっかえひっかえいろんな 美しいものを着ていた、というわけではありません。着物のまま食事をつくり、 洗濯をし、買い物にジャカジャカでかけていた、そんな様子が目に浮かびます。
幼い日、友達のお母さんたちはどんな格好をしていたのか、あまり思い出せま せん。けれども、入学式や授業参観日に着物を着てきたお母さんも多かったよう に思います。
ところで、冬の日の朝に話を戻しますと…。母だって朝起きるときはやはり寒 かったはずです。けれども、スッパリ布団のなかから抜け出たあとは、ササッと 着物を体にまとって、クルクルッのチョイチョイという感じで帯を巻付けて、か っぽう着をきてさあ出陣!という感じだったように思います。あっという間の早 ワザに子供のわたしは関心するやら、すぐに温かくなれていいなあとうらやまし く思うやら。
今になって思うのですが、あんなに手早く着物を着ていたのは、やはり一刻も 早く体を温めて動きまわらなくてはいけない、という強力な主婦のエネルギーだ ったのでしょうか。 懐かしいあのころの冬の朝。「母だって寒し、されど強 し」ということを、幼い心にもそっと宿らせた風景だったのかもしれません。

(エッセイ・羽渕千恵/イラストレーション・谷口土史子)

 

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